図-31 なぜ日本の細編みは、英語でSingle CrochetとDouble Crochetの2通りあるの?
なぜ日本の細編みは、英語でSingle CrochetとDouble Crochetの2通りあるの?
US termsとUK termsの違いを、もう一歩掘り下げてみよう
海外の編み物パターンを見ていると、日本でいう「細編み」が、あるパターンでは Single Crochet(シングル・クロッシェ)、別のパターンでは Double Crochet(ダブル・クロッシェ) と書かれていることがあります。
同じ細編みなのに、どうして名前が二つあるのでしょう。
実は、これは編み方が違うわけではありません。英語圏で使われている、二つの異なる編み物用語の体系が関係しています。
それが、アメリカ式の US terms と、イギリス式の UK terms です。
今回は、この二つの用語がどのように違うのか、そしてなぜ同じ編み目に異なる名前が付いているのかを、少し詳しく見ていきましょう。
1. 同じ細編みなのに、名前が違う

まず、二つの用語体系を比べてみます。
| 日本語 | US terms(アメリカ式) | UK terms(イギリス式) |
|---|---|---|
| 細編み | Single Crochet(sc) | Double Crochet(dc) |
| 中長編み | Half Double Crochet(hdc) | Half Treble(htr) |
| 長編み | Double Crochet(dc) | Treble Crochet(tr) |
| 長々編み | Treble Crochet(tr) | Double Treble(dtr) |
この表を見ると、US termsとUK termsでは、編み目の名前が一段ずつずれていることが分かります。
たとえば、日本の細編みは、
-
アメリカ式では Single Crochet(sc)
-
イギリス式では Double Crochet(dc)
と呼ばれます。
そして、日本の長編みは、
-
アメリカ式では Double Crochet(dc)
-
イギリス式では Treble Crochet(tr)
です。
つまり、同じ「dc」という略号でも、アメリカ式とイギリス式では別の編み方を指すことになります。
ここが、海外の編み図や編み方の説明を読むときに、特に注意したいところです。
2. 名前の違いは、編み目の数え方の違い?
では、なぜこのような違いが生まれたのでしょうか。
よく紹介される説明の一つに、編み目を作るときの「数え方」に違いがある、という考え方があります。
かぎ針編みでは、糸を針に掛けたり、引き抜いたりしながら、一つの編み目を作っていきます。
このとき、イギリス式では、編み目を作る途中で針に掛かっているループの数を基準に名前を付けている、と説明されることがあります。
一方、アメリカ式では、糸を掛けて引き抜く操作の段階を基準にしている、という説明です。
この考え方に沿うと、同じ細編みでも、
-
US terms:Single Crochet
-
UK terms:Double Crochet
という違いが生まれる理由をイメージしやすくなります。
ただし、これは二つの用語体系の違いを理解するための説明の一つです。実際の歴史はもう少し複雑で、名称がどのような経緯で定着したのかについて、単純に一つの理由だけで説明できるわけではありません。
3. 実は、かぎ針編みの用語は最初から統一されていたわけではない

現在のUS termsとUK termsの違いは、突然生まれたものではありません。
19世紀のかぎ針編みの本や手芸雑誌を調べると、当時は現在のように用語が統一されておらず、出版物によって同じ編み方の呼び名が異なっていたことが分かります。
たとえば、1844年にロンドンで出版されたFrances Lambertの『My Crochet Sampler』には、現在のイギリス式につながる「Plain Single Crochet」や「Plain Double Crochet」という名称が登場しています。
その後、19世紀半ばには、イギリスで現在の用語体系につながる名称が使われるようになっていきました。
一方、アメリカでも、19世紀半ばには現在のUS termsにつながる用語が登場しています。
興味深いのは、アメリカの出版物でも、しばらくの間はイギリス式の用語が使われていたことです。
つまり、最初からアメリカとイギリスで明確に分かれていたというよりも、さまざまな名称が使われていた時代を経て、それぞれの地域で用語が整理され、定着していったと考えられます。
現在のような二つの体系ができるまでには、長い時間がかかっていたのですね。
4. どうして「Double Crochet」が二つの意味を持つの?

ここで、もう一つ不思議なことがあります。
それは、なぜ「Double Crochet」という同じ名前が、アメリカ式では長編み、イギリス式では細編みを意味するのか、ということです。
これは、二つの用語体系が、それぞれ異なる基準で編み目の名称を整理しているためです。
名前だけを見ると、Double CrochetのほうがSingle Crochetより大きな編み目のように感じます。
実際、アメリカ式ではその理解で問題ありません。
しかし、イギリス式では、細編みがDouble Crochetと呼ばれます。
そのため、英語のパターンを読むときには、単語の意味だけで判断せず、そのパターンがUS termsなのかUK termsなのかを最初に確認することが大切です。
5. 海外の編み物パターンを読むときの確認ポイント
海外の編み物パターンを手にしたら、まず次の点を確認してみましょう。
① 用語の説明があるか確認する
パターンの冒頭や最後に、次のような記載がないか探します。
-
US terms
-
US crochet terminology
-
UK terms
-
UK crochet terminology
この記載があれば、どちらの用語体系で書かれているか判断できます。
② Single Crochet(sc)が出てくるか
Single Crochet(sc)が使われていれば、基本的にはアメリカ式です。
イギリス式では、現在の一般的な用語体系において、細編みをSingle Crochetとは呼びません。
③ Half Treble(htr)やTreble(tr)が出てくるか
Half TrebleやTreble Crochetといった名称は、イギリス式を見分ける手掛かりになります。
④ 編み方の説明や記号も確認する
用語の記載が見つからない場合は、略号の一覧だけでなく、実際の編み方の説明や編み図記号も確認しましょう。
出版元やデザイナーの国籍だけで判断するのではなく、パターンそのものに記載された説明を優先するのがおすすめです。
6. 二つの用語を知っておくと、海外の作品づくりがもっと身近になる
US termsとUK termsは、名前こそ異なりますが、基本的には同じ編み目を表しています。
二つの体系を知っておけば、アメリカの編み物本も、イギリスの編み物本も、少しずつ読みやすくなっていきます。
最初は略号の違いに戸惑うかもしれませんが、対応関係を一度覚えてしまえば、必要以上に難しく考えることはありません。
大切なのは、編み方そのものと、その編み方を表す言葉を分けて考えること。
同じ細編みでも、国や地域によって呼び方が異なる。
そんな小さな違いを知ることも、編み物の世界を広げる楽しみの一つです。
海外のパターンに出会ったときには、ぜひ最初に用語体系を確認してみてください。また、便利ツールでかぎ編み英文用語早見表を掲載していますので、合わせてご利用ください。
関連記事
-
英語のかぎ編み用語を知ろう|US termsとUK termsの違い
-
英語のかぎ編み用語と略号を一覧で確認できます。
-
-
かぎ編み用語早見表
-
日本語・US terms・UK termsの対応を確認できる保存版の一覧です。
-









































































